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「第1回 製造物責任法(PL法)と警告ラベル」

2020年1月31日発行

『警告ラベル.com』では、これまで「“警告ラベルがわかる!” 安全規格講座」を7回に分けて連載してきました。その期間中にも、国際社会では製品安全に関する規格が次々と改訂・発行されています。安全に関する意識がますます高まっており、社会情勢の変化によって許容可能なリスクも変化してきています。このような動向を受けて当社では、より一層警告ラベルについての理解を深めていただくために、新しく「“警告ラベルがわかる!” 安全規格講座2020」の連載を開始します。

「第1回 製造物責任法(PL法)と警告ラベル」では、製造物責任法の概要、製造物責任法における「欠陥」についての解説、製造物責任法に関わる警告ラベルや取扱説明書の判例についてご紹介します。

「メーカー」と「ユーザー」について
本連載で使用する「メーカー」と「ユーザー」という用語は、対象製品によって捉え方が異なります。

一般的なコンシューマー製品の場合は、製品の製造者が「メーカー」で、購入する一般消費者が「ユーザー」となります。しかし、製造装置や機械の場合は、製造装置や機械を設計および製造する企業が「メーカー」で、製造装置や機械を使用して製品を製造する企業(製品のメーカー)が「ユーザー」となります。

 

製造物責任法(PL法)施行の背景

1995年7月に製造物責任法が施行されるまで、製品事故に対する法的根拠は、民法が定める以下の3つの責任根拠によって判断されてきました。

  • 不法行為責任(民法709条)
  • 債務不履行責任(民法415条)
  • 瑕疵担保責任(民法570条)

被害者であるユーザーは、この3つの責任根拠を基に、メーカーに対し責任を追及してきました。

ところが、この3つの責任根拠は、時代の流れとともに、ユーザーにとって必ずしも有効なものではなくなりました。ユーザーが不法行為責任をメーカーに問う場合、メーカー内部で発生した過失をユーザーが立証しなければならず、高度な技術を持った製品について専門知識を持たないユーザーが立証することは極めて困難であり、被害者を保護できるものではありませんでした。また、債務不履行責任は、当事者間で直接契約を結んでいることが前提となっており、メーカーからユーザーに製品が届くまでの流通過程が複雑な場合が多いため、責任の所在を問うことが難しくなっていました。瑕疵担保責任は、ユーザーがメーカーに対して「隠れた瑕疵」に対する責任を問うものですが、賠償金を請求できたとしても製品の代金が上限となり、損害に対する正当な賠償金を得られない状況が発生していました。

そうした状況から、製造物責任の立法化を巡る議論が、1975年4月に国民生活審議会消費者保護部会に設けられた消費者救済特別研究委員会の最終報告書をきっかけに始まりました。しかし、カネミ油症事件やスモン事件などの製造物責任訴訟において、裁判所が被害者に有利な判決を下したことから、立法化を急ぐよりも裁判所の判断に委ねるのが良いとされ、議論されることはなくなりました。

その後、1985年7月に当時のEC(欧州共同体)閣僚理事会で、製造物責任に関する指令(85/374/EEC)が採択され、3年以内に製造物責任に関する立法化を欧州の各加盟国に義務付けました。このことは、世界中の国々にも影響を与え、日本でも研究者グループ、法曹界、消費者団体、政党などから立法提案が示され、製造物責任の立法化が再び議論されることとなりました。

こうして製造物責任法は、国民生活審議会を中心に、関係省庁における数多くの審議会や研究会での膨大な審議を経て、1995年7月1日に施行されました。

 

製造物責任法(PL法)の基本的な考え方

製造物責任法は、民法の不法行為責任(民法709条)の特則として立法され、製造物の欠陥に対するメーカーの賠償責任を以下のように定義しています。

製造物責任法 第三条:
製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

民法では「過失責任」により、ユーザーはメーカーの過失を立証しなければなりませんでしたが、製造物責任法では「欠陥責任(無過失責任)」により、ユーザーは自分の受けた損害の原因が製造物の欠陥にあることを立証できればよいと定められました。つまり、ユーザーはメーカーに対し、製造物を通常定められた用法に従って使用していたにも関わらず、身体や財産に被害や損害が生じた事実を主張・立証すればよいことになり、具体的な欠陥を特定し、その原因や科学的根拠まで立証する責任までは負うべきではないとされています。このように被害者保護の観点から、メーカーに「欠陥責任(無過失責任)」を課すことが製造物責任法の基本的な考え方です。

■ 損害賠償の範囲

損害賠償の範囲については、製造物責任法では第三条において、製造物の欠陥によって「他人の生命、身体又は財産を侵害した」ことによって生じた損害を賠償する責任があると定められています。ただし、人の生命や身体に対する有形的な侵害が生じていない場合は、賠償が認めらないものとされています。つまり、製造物にのみ生じた損害について、製造物責任法においては損害賠償の範囲外となります。

■ 「製造物」とは

製造物責任法では、「製造物」の対象を以下のように定義しています。

製造物責任法 第二条:
この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。

「製造」とは、部品または原材料に手を加えて製品を作り出すことであり、「加工」とは、製品に手を加えてその本質を保持しながら新しい価値を付加することとされています。なお、「修理」は対象外ですが、「改造または改良」は対象となる場合があります。

また、電気や電磁波などの無形エネルギーやコンピューターソフトウエア、情報、サービス(保守・修理など)は動産(民法上、不動産以外の全ての物)ではないため、対象外となります。ただし、機械のハードウエアに組み込まれたソフトウエアは対象となります。

■ 製造物責任が免除される場合

次の場合は、メーカーに対して製造物責任は問われません。

  • 製品が販売された当時における最高の科学技術レベルでも欠陥が発見できないことをメーカーが証明した場合(開発危険の抗弁)
  • 他のメーカーによる設計上の指示に従ったことによって欠陥が生じ、さらに欠陥の発生について自己に過失がない場合(部品・原材料製造業者の抗弁)

■ 製造物責任を負う期間

製造物責任法では、製造物責任を負う期間を以下のように定義しています。

製造物責任法 第五条:
第三条に規定する損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したときも、同様とする。

なお、「引き渡し」に関しては、メーカーが所有権を保持したまま製造物を貸与(無償、有償を問わず)した場合でも、製造物責任が問われます。製造物を直接購入・使用・消費しているユーザーだけでなく、それ以外の第三者が当該製造物の欠陥によって損害を受けた場合も、メーカーに製造物責任が問われます。

 

製造物責任法(PL法)における「欠陥」とは

製造物責任法では、その適用範囲を製造物の「欠陥」に起因する損害に限定しており、「欠陥」の有無が重要視されています。製造物責任法では、「欠陥」を以下のように定義しています。

製造物責任法 第二条第二項:
この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。

さらに、製造物の「欠陥」は、以下の3つの類型に分類されます。

当該製造物の潜在的危険性について、取扱説明書や警告ラベルに適切な警告や安全な使用方法を記載しなかった場合、「指示・警告上の欠陥」に該当します。米国では、PL訴訟の大半が「指示・警告上の欠陥」といわれており、取扱説明書や警告ラベルに不備がないかどうかが争点となります。事故が発生した場合、製品の設計上や製造上の欠陥よりも、まず取扱説明書や警告ラベルの指示内容に欠陥がなく、製品を正しく使用することが可能であったかどうかが問われます。つまり、「指示・警告上の欠陥」も製品の欠陥の一部と見なされ、メーカーが賠償責任を負うことになるのです。

メーカーは、製品事故の原因となるユーザーの誤用の恐れや「指示・警告上の欠陥」を事前に予測し、十分に対応するために、リスクアセスメントなどを実施することによって、危険源を特定し、安全方策を取る必要があります。リスクアセスメントによって洗い出されたリスクについては、リスク低減方策の「3ステップメソッド」(ISO 12100:2010, 4項)により、まず製造物や製造物の周囲に対するリスクを低減し、それでも回避できない残留リスクについては、取扱説明書や警告ラベルで正しく伝達することが重要となります。なお、「3ステップメソッド」については、本講座の第4回で詳しく解説します。

 

「指示・警告上の欠陥」が認められた判例

ここでは、取扱説明書や警告ラベルの不備によって、「指示・警告上の欠陥」が製造物責任として認められた具体的な判例をご紹介します。

■ 資源ごみ分別プレス機・上腕切断事故

廃棄物処理会社の従業員が、資源ごみを分別・プレスする機械で作業しているときに発生した事故です。
機械内部のローラーに付着した異物を除去しようと掃除口に右手を挿入したところ、手がローラーに巻き込まれてしまい、右上腕を切断する傷害を負いました。
このプレス機械は、機械内部に異物の流入を防止する措置が不十分であり、ローラーに付着した異物を頻繁に除去する必要がありました。そのため、機械内部を点検・掃除するために設けられていた掃除口は、機械の稼働中も常に開放された状態となっていました。また、掃除口にはカバーが付いておらず、稼働中に誤って手を入れた場合に、機械を緊急停止させるような機能も設置されていませんでした。
このように、異物の流入防止措置や掃除口の安全措置が取られていないことから、この製品自体は「設計上の欠陥」に該当しました。さらに、ユーザーから何度も取扱説明書の交付を要請されているにもかかわらず、取扱説明書を作成していない上、危険箇所に警告ラベルが貼られていませんでした。口頭による指示説明についても、メーカーからは機械の設置時にごく簡単な説明があっただけで、機械の操作方法や危険性についての十分な説明は行われていませんでした。これらのことから、裁判では「指示・警告上の欠陥」が認められました

■ 無煙焼却炉・火災事故

焼却炉で焼却作業中に灰出し口の扉を開けたところ、バックファイア(燃焼爆発)が発生し、大量の火の粉が飛散した事故です。
メーカーはユーザーに焼却炉を引き渡した際、燃焼中は灰出し口の扉を開けないことや、扉を開けるとバックファイアが発生して火炎が炉外に噴出する危険性があることを警告した取扱説明書を作成していませんでした。また、灰出し口の扉に、燃焼中は扉を開けない旨の警告ラベルが貼られておらず、口頭による指示説明や警告も行われていませんでした。この焼却炉の取り扱いに関しては特別な資格などが必要とされるものではなく、燃焼中に炉内を攪拌するため、燃焼中に灰出し口の扉を開ける可能性が考えられたことから、危険の予見が可能でした。危険の予見が可能な場合には、メーカーは指示・警告する義務を負うことが製造物責任法で定められているため、裁判では「指示・警告上の欠陥」が認められました。

■ 金槌負傷事故

金槌を使用した作業中に、金槌の打撃面の角が欠け、その破片が左目に入って負傷した事故です。
製品には警告ラベルが貼られていましたが、危険防止のために必要と考えられる適正な使用方法に関する指示や警告が記載されていませんでした。また、使用上の禁止事項について記載されていたとしても、ラベル内の文字の大きさが4.5pt(ポイント)と非常に小さく読みにくいものであったことから、適切ではないと判断され、「表示上の欠陥」が認められました。このことから、指示・警告の有無だけではなく、読みやすさなども含めた「指示・警告上の欠陥」が裁判の争点となりました。

PL訴訟リスクを低減するには

ここで紹介した判例はほんの一部にすぎませんが、「指示・警告上の欠陥」を争点とした裁判は多数行われています。まずは、事故が発生しないように製品を安全に設計することが大前提となりますが、取扱説明書や警告ラベルで「指示・警告上の欠陥」が問われないようにする必要があります。

「とりあえず取扱説明書に記載している」、「一応、警告ラベルを貼っている」ということでは不十分です。

製品の使用時に事故や故障が発生し、裁判で製品の使用方法について問われる場合は、次のことが重要となります。

  • 製品を正しく安全に使用する方法について、情報が不足することなく順序立てて正確に指示されている取扱説明書が用意されていたか。
  • 危険を予見できるように、分かりやすく明確な指示や警告が記載されている警告ラベルが製品に貼られていたか。

これらを事前に準備しておくことで、ユーザーが取扱説明書や警告ラベルの指示に従っていれば、事故は発生しなかったことが実証されるのです。

次回は、「製品に潜むリスクと警告ラベルの関係性」について説明します。


(参考文献)

この連載記事は、お客さまの警告ラベルへの理解を深め、ご活用いただくためのものです。この内容に基づいて生じた事故や損害について、当社は一切の責任を負いません。あらかじめご了承ください。